瀬戸内のハワイが育む「パン工房ワンハート」
「パン工房ワンハート」は“瀬戸内のハワイ”とも言われる、山口県・周防(すおう)大島にある一軒。
「ロゴをデザインしてくださった島出身の有名デザイナーさんから、“自然の中におるってことは“世界イチの美術館”より美しい“究極の美”の中におると認識した方がいいよと言われ、改めて島のすばらしさを実感しました」と語るのは、代表の嶋津朗暢(しまづ あきのぶ)さん。
空も、海も、山もある…そんな豊かな自然の中でつくられるパン。山口県産の小麦、自家製の天然酵母、周防大島産の天然塩、周防大島白木山の天然水など、地元ならではの材料や名産品もふんだんに使われています。
その中から、今回は「薔薇ロール」「小松菜とジャコとチーズのパン」「ココナッツ食パン」をもとにした“パン飲み”のペアリングを紹介します。
Pairing 01:やさしいバラの香りに、うま味を重ねて
この「薔薇ロール」は周防大島産の食用バラの花びらをそのまま練りこんだロールパン。ひと口噛んだ瞬間「わぁ!ほのかなバラの香り、しかも自然でやさしい…」と驚きました。口の中でふわっと広がる繊細なアロマ。ロールパンでそれを感じたのは初めてでした。
人工香料のような、はっきりとした強いアロマではないので、ペアリングでもこの自然なバラの香りをとにかく大切に。その上で風味を重ねます。
白カビタイプのチーズをちょい足しして、香り豊かな白ワインを一杯。
白カビタイプのチーズは、手に入りやすいカマンベールやブリでOK。ミルク感とほどよい塩味がワインとのつなぎ役になります。
白ワインは、このパンと同じくバラのような香りがあるフランス・アルザスのものがベストマッチ。ちょっと覚えにくい名前ですが「ゲヴュルツトラミネール」というブドウ品種から造られる白ワインがあり、ワインショップはもちろん、輸入食品を扱う店にも置いてあることが多いワインです。
ゲヴュルツトラミネール以外なら、リースリングという品種の白ワインを。こちらもアルザスやドイツで多く造られているブドウのワインで、香り豊かなタイプです。
Pairing 02:日本のうま味に、和柑橘のジンソーダを
「小松菜とジャコとチーズのパン」は、無農薬小松菜のフリーズドライパウダーをバゲット生地に練り込み、ジャコとチーズを巻き込んで焼き上げたパン。
「これはまさに海と山のおいしさがギュッと詰まってる!」と思わずにやけてしまうおいしさ。この“おかずパン”はシンプルにいきましょう!
リベイクしたら、ちょい足しは不要。柚子のジンソーダを合わせます
最近ではコンビニやスーパーでも柚子果汁入りのジンソーダが売られているので便利ですが、青柚子のスライスやお好みのハーブを入れると、さらに香りが引き立ちます。
ほかには、すだちやライムなどの柑橘味の焼酎サワーでもおいしく楽しめるはずです。
Pairing 03:ハワイ気分を満喫するパン飲みは、ひと手間加えて
「ココナッツ食パン」は、ココパンというハワイ島でしか食べられないココナッツあんぱんをモチーフにしたミニ食パン。鼻を近づけるだけでココナッツのアロマがふんわり香って、期待感が高まります。
ひと口食べると、生地の中に練り込まれたココナッツ風味の白あんがなんともやさしく「これは日本人の心をくすぐる味だ!」と実感。”瀬戸内のハワイ”と呼ばれる周防大島の造り手に思いを馳せつつ、さらに夏の気分を高める楽しみ方を紹介しましょう。
瀬戸内のハワイを存分に感じるトロピカルな“おつまみトースト”に
まずは、このパンを少し厚めにスライスして、さらに縦半分にカット。オーブントースターでほんのり焼き目がつくまでトーストして、バターを塗ります。
そこに、コンビニでも売っているカットパインをのせて、ミントの葉をトッピング。お好みで、仕上げにEXV.オリーブオイルを垂らすとお酒との相性がさらに高まります。
おすすめペアリングは、ホワイトビール。苦味が少なく、バナナやパイナップル、ヨーグルトのような香りが特徴的なので、このトロピカルな“おつまみトースト”にぴったり合います。
「ヴァイツェン」と呼ばれることもあるホワイトビール(白ビール)は、ベルギー生まれの小麦ビールの総称。日本の大手ビールメーカーも造っているほど人気のタイプなので、ビールの品揃えがそこそこある店なら、定番品として棚に並んでいるはずです。
自分スタイルでOK!おうちで“パン飲み”しよう
「料理は得意じゃない」「あまり時間がない」というパン好きさんも、手軽に楽しめる“パン飲み”のペアリング。
パリやニューヨークでは、以前からカフェやビストロでオープンサンドを食べながらグラスワインを楽しむなんていうのは、日常の光景。そんな“パン飲み”を、自分なりにおうちで楽しんでみましょう!
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佐野 嘉彦
ニューヨーク発祥のレストラン評価ガイド『ZAGAT』日本版の編集マネージャー、ワインスクールでの講師、料理専門出版社での勤務などを経て、現在「sembrar(センブラール)」を屋号とし、食に関する編集企画、執筆、PRコンサルティング、セミナー講師などを行っている。
NPO法人チーズプロフェッショナル協会幹事、フランスチーズ鑑評騎士、ワインエキスパート、Slow Food Nippon会員。
Website https://www.sembrar.jp
Instagram https://www.instagram.com/sanotch324/