インターンシップのために日本にやってきた、大学生のBen(アメリカ)とKai(カナダ)。パンフォーユーでは、日本のパンの魅力を世界に発信し、海外展開を加速させるための新たな戦略に取り組んでいます。
日本に来るのは今回がはじめて、日本語を話せないふたりですが、“日本のパン”については「なんとなくfluffy(柔らかい)というイメージを持っている!」とのこと。
今回、ふたりのために用意したパンは、「あんぱん」「カレーパン」そして「焼きそばパン」。日本発祥、さらに独自の進化を遂げたパンばかりをチョイスしました。
「カレーパンが一番おいしそう」「わかる、だって揚がってるから!」香りからいちばん好みのパンを予測するふたり。
アメリカでもカナダでも、食事の際にパン“だけ”を食べる機会はあまりないのだそうで、こうしてテーブルにパンだけがある状態をなんともシュールに感じている様子です。
それもそのはず、カナダで主流のパンといえば、固めの「ライ麦パン」や「バゲット」。サンドイッチにしたり、主食としてほかの料理と合わせて食べるのが一般的です。
アメリカでよく食べられているパンは、リーン系(小麦粉や水などシンプルな素材で作るパン)でいえば、「コーンブレッド」や「ベーグル」など。コーンブレッドの主原料はとうもろこし粉で、素朴な甘みが特徴の主食パンです。
リッチ系(卵やバターなどの油脂分のあるパン)でも、ロールパンやハンバーガーバンズなど、日本人からするとちょっとドライなパンが主流です。
なんでも、西欧人は日本人にくらべると唾液が多いらしく、ドライなパンがちょうどいいのだそう。欧米人に比べて唾液の分泌が少ない日本人は、「しっとり系のパンがお気に入り」という方が多いのかもしれませんね。
「ほら、やっぱりカレーパン!揚げてあるから食感が楽しい!あと日本のカレーが好き」(Kai)。
また「焼きそばパン」は、漫画やアニメに登場することから、海外でも認知度が高めのパンなのだそう。ただ、炭水化物×炭水化物というインパクトから、「自分で買おうとは思わない……」というのが、正直な感想のようです。
「日本のソースが好きなら、かなりハマると思う。私は好き」と言いつつ、数秒で焼きそばパンを完食したBen。
私たちにとってお馴染みの「ソース」の味は、実はイギリスのウスターソースをベースに日本人の好みに合わせて作られたもの。なるほど……、これも日本の味だったんですね。
「でも、いちばんおいしかったのは『あんぱん』。アメリカでも『Japan town』(日本人街)で食べられるたい焼きが好きだった」(Ben)。
日本にも、特にあんこ党!という方はたくさんいますが、海の向こうでも密かにファンを増やしていたのにはびっくりでした。ちなみにBenは、“つぶあん派”とのこと。
——さて日本のパン、いつものパンと違いましたか?
試食してみて、やっぱりアメリカのパンと比べて日本のパンはかなりふわふわしていると感じました。でも、歯ごたえもあって不思議。より繊細な食感でした。(Kai)
アメリカやカナダのパンは小麦の風味が豊かなのに対して、日本のパンはより甘く、デザートとしての位置にいる気がしますね。「メロンパン」や「あんパン」のようないわゆる甘いパンでなくても、アメリカのパンよりもずっと甘かった。
材料にミルクや蜂蜜を使っているのも、海外からするとユニークなんです。(Ben)
——日本のパンがユニークな理由って、なんだと思いますか?
まず、パンの用途が西欧と日本では違うと思います。
パンがほかの食べ物を補うもの、添えるものではなくて、パン自体が食事として扱われている。これは日本独特です。(Kai)
日本人は主食がパンじゃなくて米だからこそ、パンをあらゆる好みや場面に合わせたいと考えているんじゃないかな。スナックとしての甘いパンから手軽な食事としての焼きそばパンまで、さまざまな種類のパンがあるのは、そのためだと思う。(Ben)
確かに、日本にパン食文化が知られはじめた頃、すでに日本人にとっての主食といえば「米」と決まっていました。
Benが大好きな「あんぱん」を生み出したのは、明治2年創業の老舗パン屋「木村屋」。
創業当時、西洋から伝わったドライなパンをそのまま作っていても日本人の好みにマッチしなかったようで、なかなかパンは一般家庭には普及しませんでした。
そこで創業者・木村安兵衛と次男の英三郎は試行錯誤を重ね、「酒饅頭の酒種」を使ってふんわりとしたパン生地を作ることを思いつきます。このふわふわの生地に、さらに日本人に馴染み深い「あん」と「桜の塩漬け」を包み、木村屋創業5年目の年に「あんぱん」が誕生したのです。
今の日本では、菓子パンや食事パンはもちろん、たとえば海産物や果物、地域の食材を使ったパンなど、「パン屋さんの数だけオリジナルのパンがある」といっても過言ではありません。
さらにお客さんの好みや場面、年齢ごとの食べやすさ、地域ならではのオリジナリティなども取り入れて、いまでもパン屋さんは試行錯誤を続けているんですね。
バラエティに富んだ日本のパンの味わいを経験したふたり。
今回用意したものは私たちにとっては定番と感じるパンでしたが、面白い体験だと思ってくれた様子。つぎはアメリカとカナダのドライなパンを持ち寄って食べてみて、パン交換留学するのも楽しそうですね!