パン屋ザクロ

横須賀にある住宅地の真ん中に店を構えるパン屋さん。知らなければ決してたどり着けない、知っていても迷子になりそうな立地にありながら、10年以上愛され続ける隠れた名店です。日本にフランスパンを伝えた有名店などでの経験に加え、研究熱心で情報収集にも余念のないご主人が、丹精込めてパン作りをされています。しっとり＆モッチリとした食感、小麦が持つ甘み、雑穀が生み出す深みを感じるパンをお楽しみください。

10年かけて導きだした独自配合で小麦をブレンド

生まれ育った町・横須賀でパン屋を経営している森田です。探し当てるのが大変なくらい、目印のない普通の住宅街の中にあります。実家を建て替えて店舗にしているのですが、45年ほど前にこの地に越してきたとき、庭にザクロの木がありました。今は切ってしまってありませんが、かつてはそのザクロの実から酵母を起こしていたことも。その想い出の木「ザクロ」が、店名の由来になっています。 うちのパンの特徴は、フランスと同じ製法でつくっていることです。生地をこねて成形まで終わらせた状態から、16〜20時間ほどかけてゆっくりと発酵させています。また、硬水を使い、時間をかけて吸水させることで、粉100に対して90ほど加水することに成功（通常は60〜70ほどです）。それによって透きとおった風味と、生地のしっとり感を実現しました。小麦は目的に合うものを選んで、独自の配合でブレンドしています。小麦の甘みを引き出すことにこだわっていたら10年もかかってしまいましたが、自信を持ってお届けできる味に仕上がったと思います。 おすすめは店頭でも人気の、20％もチョコが入った「チョコチップのパン」と、風味の異なる4種類の小麦粉をブレンドした「モチモチチーズパン」です。チーズの方は、バンズのように具を挟んで食べても絶品！ お試しください。 フランスで焼き立てのバゲットを食べたとき、「また食べたくなる甘み」に衝撃を受けました。それは日本人が炊きたてのごはんを食べて、「甘い」と感じるのと同じ感覚だと思います。そんな本能的においしいと感じるパンをつくっているので、ぜひ小麦本来の甘みを感じていただけたらうれしいです。語り手：パン職人 森田克己